Dナル関連ss集。ていうか殆どが日記で書いたssログだけど。
気が向いたら加筆修正。上に増えていきます。
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 とある日の、放課後の生徒会室。そこには、生徒会会長、他生徒会役員、何かしらの実行委員、はたまた普通の一般生徒……等、様々な面子が揃っていた。
 しかしここに揃ったのは、ある目的を持った生徒の、ほんの一部に過ぎなかった。
「さて……君たちに集まって貰ったのは他でもない」
 会議のように並べられた机の、さながら議長席に腰かけていた男が、徐に口を開いた。すると一同は、一斉にその男に視線を向けた。
「今日は定例会議の日ではないが、臨時会議を開きたいと思う」
「会長、今回の議題は何ですか?」
「まぁそう焦るな。今日のは議題、というより報告なのだが……」
 会長、そう呼ばれた男は二,三度頷くと立ち上がり、一同を見回した。
「我らが愛しの彼が、文化祭の劇で白雪姫を演じることになったのだよ!!」
 会長の言葉に、一同からは騒めきが起こった。
「まっ、マジですか会長ーっ!?」
「ああ! 本気と書いてマジさっ!」
 ――彼……この場合の『彼』とは、彼らが最も崇拝し、愛する人物。
 入学時から既に何人もの熱狂的なファンがいたという、少年のあどけなさを残した美青年のことだった。彼は今年、二年に上がったばかりであるが、既に一年の生徒にもファンが多かった。
 そしてこの場にいる男たちは皆、彼が入学したときから既に彼の虜であった。
「あぁ……彼の女装が見られるなんて、夢にも思わなかった……!」
「俺もだよ、うわっ……想像するだけで興奮してくる……」
 ………………。
 一同は、彼の挙動の一つ一つを思い出しながら悶えていた。あの可愛さは、あの美しさは、あの幼さは、あの儚さは、堪らなく彼らの萌え心を刺激した。
「きっと、凄く似合うんだろうな……」
 その呟きに、一同は激しく同意した。
 男子校だから、ということもあるかもしれないが、彼らは同性に対して欲情することも多かった。その対象が今は彼な訳だが、寧ろこの場にいた全員は、他校の女生徒よりも彼に欲情し得るだろう。
 不思議な魅力を持つ、可愛らしく美しい彼。歴とした男であるが、姿形が華奢で、言動や行動の一つ一つがまるで『理想の女の子』なのだ。
「そういや、白雪姫って、姫を目覚めさせる王子っていたよな」
 一同が妄想の世界に飛び立とうとしている、丁度そのとき。一人の生徒が呟いた。
「!!!」
 それを聞いた全員が、硬直した。それもそうだ、白雪姫には、毒林檎を誤って口にして仮死状態になってしまった白雪姫に、王子がキスをして目覚めさせる、というシーンがあったのだ。
「か、会長! 王子役は一体誰なんですかっ!!」
 その言葉に、くるり、と一同は一斉に会長を見やった。
「あー……言わなくても解ると思ったんだが、言った方がいいか?」
 苦笑する会長に、一同はあぁ、と溜息をついた。会長の言いたい人物が、パッと頭に浮かんだからだ。
 その出で立ちと挙動からよく不良と間違われるが、実際はそうではない、凶悪面をした、彼のクラスメート。頭が悪そうに見えて意外と成績がいいことは、あまり知られていない。
「あぁ、やっぱアイツか」
「だな。彼が姫役だったら王子はアイツ以外考えられないもんな」
 彼らが仲良しで普段一緒に行動していることは、周知の事実であった。それと同時に、お互いを大切に思っていることも。
「アイツなら仕方ないか」
「だな」
 何だかんだで一同は、彼が幸せそうにしていればハァハァ出来るという人種であった。あまり知られてはいないが、ここにはM気質の方が多かったのだった。

―――
2007/09/27_文化祭ネタ。↓の続きというか同軸別話というか。

 文化祭が、近づいてきた。俺達のクラスは出し物で、劇をすることになったらしい。俺は正直どうでもよくて、早々に屋上へとエスケープしていたから、どういう話し合いをしたのかは知らない。
 話し合いを途中で抜けてきたヤツが屋上に来たから聞いたが、劇は『白雪姫』をすることになったらしい。ちょっと待て。ココは男子校だろ……。
 まぁそこまではいい。俺はどうせ、舞台道具を運ぶことくらいしかしないだろうし。変な配役になることなんて、まずないだろう。
 だが。だが何で、何で白雪姫がナルヒコなんだ?!!

「オイ!! 何で白雪姫がナルなんだよ!!」
 さっさと屋上から教室に戻ると、文化祭実行委員を見つけ、胸倉を掴み、俺は聞いた。
「えっ、だって、他にやりたがるヤツもいなかったし……」
 ちょっと待て。やりたい人間がいたから、演目が決まったんじゃないのか?
「……じゃあ何で白雪姫なんかやることにしたんだよ」
「いや、あの……」
「何だ、言えよ」
 急にどもりだした実行委員を締め上げるようにして、更に睨みつけると、そいつは引きつった表情を浮かべた。
「みっ……皆がナルヒコの女装姿が見たいって……」
「ぶっ!!!」
 思わず吹き出した俺に、更に実行委員は続けた。
「……ちなみに王子役は、Dだから」
 それを聞くと俺は、掴んでいた胸倉を離し、実行委員を開放した。
「マジか」
「げほげほっ……。マジだよ。……キスシーンもあるから」
「そうかそうか! いやー、うん、俺も劇は白雪姫がいいなと思ってたんだよな!」
 咳き込む実行委員を背に、俺は意気揚々と立ち去った。
 これが災難の始まりだとは、誰も思わなかった。

―――
2006/06/08_何故か学生時代。気が向いたら続き書きます。

 今日のライブは大盛況。俺はめっちゃ疲れてもうて、ダミヤンの旦那がライブ後に飲み会があるとか言っとったんやけど、パスしてさっさと家路についた。
 途中、なんや酒が飲みたなって、コンビニに寄ったら……おっ、あの後姿は、俺の大好きなナルちゃんや。
「なんやナルちゃん、こない遅くに買い物か?」
「……何だ、Dか」
「お前のことナルちゃん言うヤツは俺しかおらんやろ」
「……」
 何や、相変わらずナルちゃんは素っ気ない態度やな。ま、そこがええねんけど。
「おっ、無視かいな? 酷いナァ。ナニ買いに来たん?」
「…………うるさい」
 後ろからついて行く俺が邪魔なんか知らんが、ナルちゃんは歩幅を広げて、足を速めて店内を歩きよった。ちゅーか俺の方が背ぇ高いし足も長いし、意味ないんやけどな。うんうん、可愛い行動や。
「教えてくれてもええやろ」
「……君が今ここで舌噛んで死ぬなら教えてあげる」
「ならお前に噛んで欲しいわな〜」
 俺を見上げるナルちゃんの可愛いこと可愛いこと。もうナルちゃんに舌噛んで貰えるなら本望や。って、俺はマゾちゃうねんけど。ここがコンビニやなかったら、押し倒して、ちゅーしとったわ。
「……馬鹿だろ、君」
「そーかもしれんわ。もうお前しか見えん馬鹿や」
「…………馬鹿な子ほど可愛い、か」
「ん? 今何や言ったかいな? 聞こえんかった」
 ぽそりとナルちゃんが何や呟いたような気がしたんやけど、俺には聞こえんかった。何言うたんや?
「何でもない。今日は酔いたいんだ。君の家で呑むから」
「急に態度変わりよって……」
「いいじゃない。それがいいんじゃなかった?」
「そやな。ほな、さっさと買うて帰るか」

―――
2006/06/06_2Pは関西弁を推奨します。

 今日は久々に後輩と会うことになった。と、いうより奴は俺に、恋人を自慢したいだけだと思うが。
 何故かナルヒコが一緒に行きたいと言ったので、連れて行くことにした。彼が自分から俺と出かけたいと言うのは珍しかったので、内心とても嬉しかった。
 待ち合わせ場所は、後輩の希望で、海の見える公園。近くに美味い店があるとか言っていたので、奢らせるつもりだろう。だが幸いにも、今月は臨時収入があったので、多少高い料理でも平気だろう。
 待ち合わせ場所に着くと、そこには既に後輩が待っていた。ナルヒコはというと、すっかり夕暮れの海に見入っていた。
「よぉ、久しぶりだな、タロー」
「あ、先輩お久しぶりです!」
 手を振る後輩――タローの横には、ちょこんと、人形のような姿の人影がベンチに座っていた。あれがタローの恋人か。ま、美しさならナルヒコには敵わないけどな!
「は、はじめまして」
 近づくと少年(ではないと思うが、俺にはそうとしか見えない)は立ち上がり、ぺこりと頭を下げた。ナルヒコよりも、随分と礼儀正しそうだ。
「おう、はじめまして。よろしくな」
「待ってよD、置いてかないでって……」
 俺が少年に挨拶したとき、一人海に見入っていたナルヒコが駆けて来た。その走り方が女々しくても、俺は一向に構わない。……誰だ今キモイとか言った奴!
「あっ、どうもはじめまして。俺、タローっていいます」
「あ……どうも。僕はナル……」
 爽やかに挨拶をしたタローにつられてナルヒコも挨拶をしたが、急に、彼は動きを止めた。
「ナルヒコ、どうし……」
「な、何この子! 僕より美しいだなんて!!!」
「……へ?」
 目の前にいた少年を見るなり、ナルヒコは白いハンカチを噛んだ。幸い少年は、彼の行動に疑問を持たなかった。と、いうより天然なのか。
「……はぁ」
 俺は溜息をつくと、彼を宥めた。
「……落ち着けナルヒコ。お前の方が綺麗だから」
 それに対してタローが何か言いかけていたが、俺は徹底的に無視した。

―――
2006/06/04_天然とナルシスト。

 彼と一緒に、遊びに行くことになった。
 あまり彼は出かけることを好まなかったが、俺が何度も何度も頼み込んで、漸く了解してくれたのだ。彼はそうは思っていなかっただろうが、俺は内心、彼とデートが出来る! と喜んでいた。
 だが。
「……僕、もう帰りたい」
 彼は周りの人間の多さに酔ったようで、ベンチに座り、隣に座る俺の肩に、ぐったりと身体を預けていた。
「……まだ来たばかりだろ?」
「だって、人が多すぎる……」
 彼はきゅっと俺の袖を握り、俯きながら呟いた。しかし彼は別段、人間恐怖症、という訳ではなかった。ただ、『女性』というものに対し、軽度のトラウマがあるらしいことは知っていた。
 今日は夏休みの、しかも日曜ということもあり、カップルや家族連れ、友達とキャーキャー騒ぐ女子高生が多く見られたのが原因だろうか。
「……そうか。じゃあ帰ろうか」
 俺が立ち上がり、手を差し伸べると、彼は眉尻を下げて微笑んだ。そして俺の手をとると、ゆっくりと立ち上がった。
「ごめんね」
「……いい。お前が辛そうにしていると、楽しめないし」
 彼が立ち上がったのを確認して俺が手を引こうとすると、彼はその手に指を絡ませ、まるで恋人がするように手を繋いだ。思わず、胸が高鳴った。
「……あのね、D。僕、行きたい所があるんだけど」
「どこだ?」
 平常心を保とうと、彼に気づかれないように、大きく息を吸った。まさか彼がこんなに俺に甘えてくれるとは思っていなかったから、内心、焦っていた。
 そんな俺に気づいたか気づいていまいか、彼ははにかみながら、小さく呟いた。
「……君の家。二人でいたいんだ」
 途端に俺は顔が熱くなるのを感じたが、すべて夏の陽射しの所為にした。

―――
2006/06/03_バカップル系。

 ザァザァと雨の降る中、忙しなく鳴り響くインターフォンと、ドアをノックする音が聞こえた。誰だろうかとドアを開けば、部屋に飛び込んで来たのは、彼だった。
「君は、僕を裏切ったりは、しないよね?」
 挨拶をするでなく、唐突に切り出された言葉に、思わず俺は息をのんだ。わざわざこの土砂降りの雨の中、何故、彼は。
 この冷たい雨の中を、傘も差さずに走ってきたのだろう、潤んだ瞳で俺を見上げる彼の身体と声は、震えていた。
「急にどうし……」
「答えてよ、答えてってば……!」
 俺を見上げて、胸に縋りついた彼を、俺は優しく抱き締めた。洗濯し立ての服が濡れてしまっても、一向に構わなかった。
「大丈夫、俺は裏切らないから」
「よかった、D……」
 安心させるように背を撫でながら言うと、彼はぐったりと、その場に崩れ落ちた。慌てて支えると、彼が気を失っているのが解った。
「……」
 彼がどうして俺のところにやってきたか、彼の服を見て、漸く気がついた。所々が千切れ、裂けた服。斑に見えるのは、きっと彼の、血痕。
 彼はやっとのことで逃げてきたのだ。彼を閉じ込める、檻から。
「……ごめん、もっと早く気づいてやれればよかったのに」
 ボロボロで痣だらけの身体を、俺は、きつく抱き締めた。そして、もう彼に辛い思いをさせまいと、俺は誓った。

―――
2006/05/29_何かシリアス系。

 俺が誰よりも好きなのは、俺の前でにこにこと微笑みながら、手鏡を見つめている彼。だが彼は、自分しか愛せない人間だった。
 だから俺はこうやって、彼の部屋で、ただ彼を見つめているだけ。俺が彼を恋愛対象として好きなことを、彼は知らない。
 どうして恋人でもない俺がこうやって彼と共にいることが出来るかというと、それは単純なこと。幼馴染みというか何というか、小学校からの腐れ縁だった。
 あの頃はまだ、彼はナルシストではなかった筈だったが。
「ねえ、D。僕って綺麗だよね?」
「あぁ」
 うっとりと手鏡を見つめている彼。かなり病的だ。だが、そんな彼に執心な俺も相当、病的だ。
 彼を見て欲情している俺は、末期なのだろうか。あの身体を抱きたいと思ってしまう俺は。
「でも、もっと綺麗になる方法がある」
「えっ! 何、どういう方法?!」
「それは……」
 珍しく俺から投げかけた言葉に反応した彼を、ソファーに組み敷いた。身体がやけに細い。本当に彼は男なのだろうか。
「……うわっ?! な、何するのD……」
 色々美肌にこだわっているらしい彼の肌は、男のものとは思えなかった。そんな彼の身体を弄り、俺は言った。
「男に抱かれている間は、女は綺麗になる」
「……僕は男だよ」
「知ってる」
 彼はもう呆れることしか出来なかったようだ。
「……まぁいいや。D、君だから許すんだからね」
 彼がそう言って俺に妖艶な笑みと口づけをくれただけで、恥ずかしながら、俺は勃ってしまっていた。

―――
2006/05/29_きっとDは早漏。

「……ねぇ、君はいつまでココにいるの?」
 ついさっきまで泣いていたと思ったら、この部屋の主、ナルヒコは顔を上げると俺を睨みつけた。
 雨の中、駅の近くの公園のベンチに座り込んで泣いていたから、彼の家まで連れてきてやったというのに、彼は何とも思っていなかったようだ。
 寧ろ、迷惑だと思っているのか。しかし、関わるなと言われると、関わりたくなる。
「……」
 泣きはらしたからか、彼の目元はすっかり赤くなっていた。手を伸ばせば、パシリと叩かれた。
「何とか言いなよ、D」
 昔は見せることのなかった表情をして、彼は言った。あの頃の無垢な微笑みは、ここにはなかった。
「……お前が、好きだから」
 訊かれたから正直に言えば、彼は目を丸くした。しかしそれは一瞬で、彼は呆れたように溜息をついた。
「……それ、本気で言ってるの?」
「……」
 頷けば、彼は表情を歪めて哂った。彼がこんな表情をするとは、俺は知らなかった。
「馬鹿じゃないの? そんな嘘には騙されないから。君もどうせ僕を笑いに来たんだ」
 どうして、どうしてこんな風になってしまったんだろう。
「違う、俺は……」
「違う訳ないでしょ、君も嘘吐きなんだから」
「嘘じゃない、ナルヒコ……」
 手を伸ばせば叩き落され、言葉は届くことなく砕かれた。彼はもう、俺の知っている彼ではないのだろうか。
「好きだって言うなら僕を抱いてみろよ! はっ、男なんか抱けないだろ!?」
 嘲笑いながら、彼は俺に背を向けた。
「さっさと出ていけよ! もう二度と僕の……!」
 彼が言葉を紡ぎ終わる前に、唇を塞いだ。雨にうたれて冷え切った唇が、妙に心地よかった。
「な、何……っ」
 そのまま濡れた床に組み敷けば、彼は怯えた瞳で俺を見上げた。
「そんなに言うなら、抱いてやるよ」
 その瞬間、彼は一瞬だけ笑みを浮かべたが、俺は見なかった振りをした。

―――
2006/05/28_躍らせる男と躍る男。

「僕は朽ち逝くくらいなら、美しいまま終わらせたいんだ」
 普段は電話などしないナルヒコが、急に電話をかけて来て、開口一番そう言った。
「僕は君の中に、いつまでも美しいままで残るから」
 何を言っているのか解らなかった。彼が何を言いたいのかが解らなかった。
 言葉を紡いだ時の彼がどんな表情をしていたか、俺は知らない。
「さよなら」
 最後に聴いた言葉が、やけに耳に残った。
 言いたいことだけ言って、こっちの言葉にも耳を貸さず、彼は電話を切った。胸騒ぎがして、ライブ前だというのに、彼の住むマンションへと走った。
 インターフォンを鳴らしてもドアを叩いても、反応がなかった。無理にでもスペアキーを作っておいてよかったと、酷く思った。
 急いで鍵を開け、中に飛び込んだ。
 いない。リビングにも、キッチンにも、ベッドルームにも。
 どこに、彼はどこに。
 藁にでも縋る思いでバスルームへと飛び込むと、服を着たままバスタブに浸かる彼がいた。水浸しの床に置かれたグラスと瓶と、一枚の便箋。
 俺は嫌に覚めた思考で、便箋を拾い上げた。

 『さよ ら、 しい、僕。さ  ら、愛し 、D』

 文字が滲んでしまっていて、読み取ることが出来たのは数文字。けれど、彼の言いたいことは解った。彼は初めて、教えてくれた。
 俺は傍らにあった瓶の中の錠剤を、ありったけ飲み込んだ。
「お前がいない世界なんて、興味もない。一緒に逝かせてくれ」
 息をしていない彼に口づけをした。最初で最後の口づけは、酷く冷たかった。

―――
2006/05/27_自殺と後追い自殺。